気管支拡張薬にはβ₂刺激薬、テオフィリン薬、抗コリン薬などがあるが、気管支平滑筋の異常収縮を改善させるために用いられる。主に気管支喘息とCOPDに用いられるが気道狭窄を伴う急性気管支炎や気管支拡張症の治療にも用いられる。
気管支拡張症とは、気管支が何らかの原因で広がってしまった状態である。気管支にダメージを与える原因は、子供のころに罹った感染症や結核、肺非結核性抗酸菌症、膠原病、先天性の疾患などさまざまである。気管支拡張症になると痰などが気管支にたまり慢性的な肺の感染症にかかる危険性が高まる。感染症によって肺や気管にさらなる炎症を引き起こし、息切れ、胸の痛み、疲労感などの症状を招く。
交感神経の受容体にはɑ受容体(ɑ₁・ɑ₂)とβ受容体(β₁・β₂・β₃)が存在し、その内気管支平滑筋弛緩に関与するのが、β₂受容体である。β₂刺激薬は、比較的選択的にβ₂受容体を刺激するが、心拍数増加や心収縮力増加などの心刺激作用を示すβ₁受容体も少なからず刺激するため、心悸亢進などの作用も呈する。
テオフィリン薬は、非特異的ホスホジエステラーゼ阻害作用によって、細胞内cAMP濃度を増加させ気管支平滑筋を弛緩させる。β₂刺激薬より気管支拡張効果は弱いが、抗炎症作用を併せ持つことが知られている。
抗コリン薬は、副交感神経を抑制することで気管支拡張作用を示す。副交感神経末端から分泌されるアセチルコリンは、ムスカリン受容体に作用することで気管支の緊張を高め、気管支を収縮させる。ムスカリン受容体は、M₁~M₄の4つのサブタイプに分類されるが、気管支平滑筋収縮に関与するのはM₃受容体である。抗コリン薬は、アセチルコリンの分泌を抑制することで、ムスカリン受容体を非選択的に抑制するので、M₃受容体抑制作用である気管支拡張作用の他に、M₂受容体抑制作用である鎮咳作用や気道分泌抑制作用も示す。
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